バカンスのはなし [思い出話]
あれはまだ私たち夫婦がドイツに住んでいた頃のことです。
一週間とれた夏休み、思いきってギリシャの島で過ごすことしました。
旅行パンフレットの写真に一目ぼれしたのです。
青い海に青い空、丘の上に並ぶ風車・・・・
こんなところで夏休みを過ごしたら、
超ステキ♡
私たちはウキウキ気分でギリシャの島へと出かけました。
旅行会社のチャーター機、チェックインの最中に「おや?」と思いました。
男男、もしくは女女の2人組がやたらと多いのです。
飛行機に乗って、「あれ?」と思いました。
男男、もしくは女女の2人組が
いちゃいちゃしているのです。
夫が私のひじをつつきます、
「ミッソ、前、前の席。」
前の座席の男性同士が
ディープなキスをしています。
「おぉぉぉ、おで、男同士のキスは初めてみただわ!」
興奮して夫を振り返ると、夫は窓の外をじっと見たまま顔を動かしません。
そして着陸するまでの間、
私は前の座席のカップルに釘づけ。
夫は前を見ないように、じっと窓の外を見ていました。
そして、島に着き。
私たちは気がつきました。
ここは私たちがくるべき場所ではない。
イミグレーションを待つ間、
どうしてみんなディープキスしてんの?
いえいえ、ヨーロッパのバカンス地なんてたいていそんなものです。
でも、
どうして男同士(女同士)なの?
とりあえずホテルにチェックインし、町を散歩しました。
青い空、青い海、かわいい町並み。
空港や機内で見た不思議な光景をすっかり忘れさせる、
ステキな景色。
ウキウキ気分が戻ってきます。
「パンフレットでみたまんまだわ~、きれいなところだだ~。
来てよかったな、旦那様♪」
とりあえずビールを飲んで一休みしようと、店に入りました。
店員はイケメンです。
なぜかじ~っとこちらを見ています。
え?イケメン、おでに気があるのか?
いいえ。
違いました。
イケメンの熱い視線は、
夫に注がれていました。
ビールをはこんできたイケメンは、
一応レディーファーストで、私の前にビールを
ガチャンと置きました。
そして、夫の前にビールを優しく置き、
夫をじっと見つめ、
ウィンクして去りました。
私たちはビールをがぶがぶと一気に飲み、
すっかりびびっている夫のかわりに私が会計を済ませ、
逃げました。
しかし、せっかくのバカンスです。
こんなことでめげてはもったいない。
私たちはビーチに行きました。
白い広い砂浜、真っ青な海。
テンションが上がります。
「きれいな海だだ~、きてよかったな、旦那様♪」
子供が多いところは避けようと、
静かな場所を探していると、
おや?
何あれ?
立ち止まってじ~っと見て、わかりました。
砂浜に全裸の男性がいっぱい。
びっくりして立ち尽くす私の腕を引きずるようにして、
夫が逃げました。
「もう、帰りたい」、と今にも言い出しそうな夫を笑わせようと、
「いや~、びっくりしただわ。
おで、あんなにたくさん、ち○ぽ見たの初めてだだわ(笑)。」
夫は笑いません。
「ピンクだったな(笑)。」
笑いません。
なぜなら、その時夫は気がついていたのです。
この島には、ファミリービーチ(子供いっぱい)とヌーディストビーチと
ゲイビーチしかないことを。
浮き輪をつけた子供達と泳ぐか、
裸で泳ぐか、
ゲイの皆さんと泳ぐか。
結局私たちは、
裸で泳ぎました。
一度裸で泳いでしまったら度胸もすわりました。
昼はヌーディストビーチで泳ぎ、夜にはバーに行き、
夫は相変わらず男性達の熱い視線を浴び続けていましたが、
慣れたようです。
なつかしい思い出です。