スターになったはなし [思い出話]
前回記事で夫の恐ろしい体験をお話しましたので、
今日は私のふしぎ体験をお話します。
場所はエジプトです。
エジプト旅行はガイドつきツアーで行くのが一般的ですが、
団体行動が苦手なわたし達は個人旅行をすることにしました。
移動も好きではないのでピラミッドの近くのホテルをとり、
一週間そこに滞在。カイロ近郊の遺跡を見てまわろう、と計画しました。
ホテルから大ピラミッドまでは徒歩でいける距離です。
ピラミッドまで散歩したら楽しいね、と期待に胸を膨らませ、
エジプトに到着しました。
ホテルは本当にピラミッドのすぐ近くにありました。
部屋の窓からピラミッドが見えます。
な~んて贅沢♡、超ロマンチックだな、旦那様♪
ピラミッド好きの夫は感動のあまり、目が潤んでいます。
到着したばかりで疲れていましたが、
「ピラミッドまで散歩しよう」と早速でかけました。
ピラミッドまでは徒歩10分の距離です。
しかし、少し歩いて大通りに出たところで、
物売り達がわたし達の姿を発見し、
「ひゃっほ~!カモ発見~~!!!」
わっさ~と集まってきました。
みるみるうちにわたし達の周りにはすごい人だかりが。
ピラミッドはすぐそこなのに・・・全く進めません。
残念ですが、ピラミッドへの散歩は無理だと断念しました。
やむを得ずホテルに戻り、タクシーをチャーターします。
おおお、金持ちじゃ~ん!
と思われるかもしれませんが、これが一番安かったんです。
運転手のかたがガイドもしてくれるとのことで、
結局、滞在中ずっとタクシーをチャーターすることになりました。
運転手さんは明るくてかわいらしい、
エディ・マーフィー似のエジプト人でした。
博識だし、ギャグも冴えています。
ただ、どういうわけか、
私の目を見ません。
夫とは普通に話すくせに、私が話しかけると、
真っ赤になります。
か、かわいい・・・・。
イスラム教では男性と女性の接触を厳しく禁止しているので、
「女性と仲良くおしゃべり」というのは
結婚前にはあまり経験できないことなのだそうです。
日本では今や決してお目にかかれない純情な青年に出会えた、
それだけでもう十分エジプトに来た価値はあったというものです。
しかもエディ君のおかげで移動の心配はなくなりました。
さあ!楽しいエジプト旅行、しきりなおしてレッツゴーです!
エジプトに来たからには、まずは、
「エジプト考古学博物館」
に行かねば!ということでエディ君の運転でエジプト考古学博物館へ。
そして、博物館前の渋滞のため、のろのろ運転の車内にいたとき、
事件は起こりました。
修学旅行(?)の小学生とみられる現地の集団が、車内のわたし達を発見。
なにやらざわざわしています。
好奇心に満ちた目で我々の車にわらわらと近づいてきます。
あっという間に車は大勢の子供に取り囲まれました。
エディ君が言います。
「子供達に手を振ってあげてください。」
わたし達はなんだかよくわからないまま、手を振りました。
大歓声です。
子供達は満面の笑みでわたし達に手を振り返し、
エディ君がクラクションを鳴らして子供達をけちらし、車を発車させるまで、
わたし達が手を振るたび、きゃ~きゃ~と大喜びしていました。
走り出した車の中から後ろを振り返ると、
子供達は車が見えなくなるまで、
大きく手を振り続けていました。
じ~ん、わけわからないけど、じ~ん。
エディ君が教えてくれました、
「あの子達は田舎の小学生で、
日本人を初めて見たのでうれしかったのです。」
・・・なるほど。
エジプト考古学博物館でツタンカーメンの棺などを見ているとき、
またもや事件は起こりました。
きちんとした身なりのおじいさんがわたし達に近寄ってきて、
「写真をとってください。」
というのです。シャッターを押してくれという意味だと思い、
夫が快く了解すると、おじいさんが言います。
「あなたではありません、そちらのマダムです。」
マダム?
え?おで??
おでにシャッターを押して欲しいと?
いいえ、そうではありません。
おじいさんは「私と一緒に写真を撮らせてください」とお願いに来たのでした。
しかも、私と一緒に写真に入る相手はおじいさんではありませんでした。
おじいさんの連れの若い青年です。
丁寧にたのまれ、断る理由はありません。
私はその青年と一緒に写真をとりました。
パスポート偽造用に悪用されるんじゃないか、
と疑ったりしましたが、あのポケットカメラで撮った全身写真では
パスポートの偽造はできません。
「どうもありがとう、大切にします。」と青年にお礼を言われ、
いいことをした気分になりましたが、わけがわかりません。
なんだったんだろう、とぽかんとしていると、
今度はエジプト人と思われるおばさんが
私にカメラをむけていました。
私の写真を撮り、ありがとう、というように手を上げて去っていきました。
ますます、わけがワカリマセン。
もう、ミイラの棺なんてどうでもいいです、頭の中は謎だらけです。
ピラミッドの謎なんてどうでもいいです、写真撮られた謎のほうが大変です。
車に戻り、エディ君に写真事件を話すと、
「日本人がめずらしかったのでは?」
と言います。
でも、日本人観光客はほかにもたくさんいました。
なぜ?どうして??
ホテルに戻り、テレビをつけると現地の局でやっていたのは、
おしん。
のっぺりした、こけし顔の私。
ひょっとすると、私はおしんと間違われたのではないかと、
今では一応、そのように解釈しています。
パスポート偽造の疑いも捨てがたいけど・・・。(恐)